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猿飛佐助 真田十勇士

書名:猿飛佐助 真田十勇士
著者:柴田 錬三郎
発行所:早川書房 
発行年月日:2014/4/10
ページ:309頁
定価:620円+税

「猿飛佐助」「真田十勇士」などは1911年(明治44年)から1924年(大正13年)にかけて196篇を刊行した立川文庫(たつかわぶんこ)にも収録されている題材です。柴田錬三郎は純文学作家でもあり、大衆文学作家でもあります。この本はどこまでも娯楽に徹していていかに嘘を本当らしく見せるか?それが作家の力強と言ったところがあります。柴田版立川文庫といった作品です。

武田勝賴の夫人が、武田最後の地から忍者によって逃れ、子供を産んで亡くなってしまう。その子は戸沢白雲齊という忍者に育てられる。これがせむし男の猿飛佐助、真田幸村の子分となって仕える。山田長政、百々地三太夫、淀君、霧隠才蔵、三好清海入道、柳生新三郎、岩見重太郎など猿飛佐助は天才的な忍者に成長するが、国を治めるほどの器量はない。善良すぎて人を殺すことが苦手という欠点を持っているが、それを愛されて真田幸村の信頼をえる。信長、秀頼、秀吉の正史の流れは変わらないけれど裏で奇想天外の歴史娯楽物語が展開していく。なかなか冴えている作品です。史実と違うなんで野暮は言わない。ただただ楽しめば良い。そんな本です。