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刀伊入寇 藤原隆家の闘い

書名:刀伊入寇 藤原隆家の闘い
著者:葉室 麟
発行所:実業之日本社
発行年月日:2014/4/15
ページ:413頁
定価:639 円+税

この本は2回目
栄耀栄華を極めた藤原氏道長の時代。女真族(満洲民族)の一派とみられる集団が主体の海賊が壱岐・対馬を襲い、更に筑前に侵攻した。この国難に立ち向かった男がいた。藤原隆家(中関白家の道隆の子、道長の甥)である。でも余り知られていない。日本の歴史では平安時代は平和な世の中が続いたように考えられている。本当!
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平安時代は遣唐使を廃止して事実上の鎖国時代、国内では死刑もなかった平和な時代でも、かつて刀伊の入寇(といのにゅうこう)という渤海国が契丹に滅ぼされて、その遺臣女真族(満洲民族)の一派とみられる集団が主体の海賊が壱岐・対馬を襲い、更に筑前に侵攻した。そんな国難に決然と立ち向かった藤原隆家(中関白家の道隆の子、道長の甥)を描く。

この作品は2部仕立てになっていて、1部は青年時代を伝奇小説的に描く、朝廷きっての貴公子でありながら荒くれ者と呼ばれた藤原隆家は、花山法皇、藤原道長との喧嘩に明け暮れる。定子、清少納言、紫式部、彰子など宮廷文化にも触れている。2部は道長との政争に嫌気がさして、自ら望んで九州・大宰府の地で刀伊の襲来を迎え撃つ。この戦いは恩賞なき戦い。京都の朝廷の命令を受けて戦を始めていたら間に合わない。したがって大宰府の判断で行う。勝っても負けても領土が増えるわけではない。

歴史から殆ど消されてしまったかつてなき国難“刀伊入寇”に立ち向かった貴族藤原隆家を史実を元に豊かな想像力を駆使して現在に甦らせている。読み応えのある作品です。

此の世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思えば 藤原道長

道長全盛期に読んだとされる和歌。でも満ちた月は欠けはじめ兆し、後は凋落を予感して読んだのか?
欠ければ満ち、満ちれば欠ける自然のことわりを知れば、絶頂だと喜んでも居られない。

刀伊の入寇(といのにゅうこう)は、寛仁3年(1019年)に、女真族(満洲民族)の一派とみられる集団を主体にした海賊が壱岐・対馬を襲い、更に筑前に侵攻した事件。刀伊の来寇ともいう。
刀伊とは、高麗語で高麗以東の夷狄(いてき)つまり東夷を指す。

『刀伊入寇』刊行記念エッセイ「消された英雄」
http://www.j-n.co.jp/columns/?article_id=11