書名:人類の気候の10万年史
過去に何が起きたのか、これから何が起きるのか
著者:中川 毅
発行所:講談社
発行年月日:2017/2/20
ページ:218頁
定価:920円+税
明日の天気予報は少し信用できる。でも1週間後、1ヶ月後については来てみないと判らない。30年後に来ると言われている地震、まして2100年の温暖化の気温(コンピュータシュミレーション)なんて信用できますか?未来の予測というのは線形なもの、周期性のある事象に限って予測が出来るもの。非線形でありランダム性のある事象に対して予測は出来ないというのが科学の世界の常識。それを地球温暖化にしても、地震にしても、火山噴火にしても出来るように煽っている。ゴアのようなド素人の誇大広告が「不都合な真実」興業としては面白いけれど、CO2が温暖化の原因の如く言われて、日本では気象予報士すら間違った認識を持っている。
この本はちょっと難しい。科学の議論は非常に難しい。頭のいい人しか判らない。したがって難しい理論を判るように説明をすると、意訳やアバウトさが入ってしまう。間違いなく表現するにはやっぱり難しくなってしまう。したがって安易に理解しやすい屁理屈が世の中に広まってしまう。日本だけの現象か?よくわからないけれど、異論を唱えるとみんなでバッシングという非常に変な世界。もう少し自分で考えて見ることが必要。そのための手段としては本書をはじめ、いろいろな本が出ている。選択するのもやっぱり自分で。
著者は長年、福井県・水月湖に堆積する「年縞」を調査し、現在、年代測定の世界標準となっている水月湖の「年縞」に時代の定義を与えてきた人です。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、いま5万年前まで確定すること出来るようになった。年輪法(木の年輪を数えて)では1万2600年までの標準は出来ていたが、人類が地球に出現した20年には及ばない。これは炭素C14の放射性元素と組み合わせ年代を確定するそうです。そしてこの水月湖に堆積する「年縞」が明らかにした最新の研究成果を発表しています。
人類は誕生から20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。現大の温暖化の議論よりずっと遙かに大きな気候変動だった。地球温暖化は人間が使い出した炭素が原因とされているが、過去の20万年は人間的要因もなかったけれど10℃以上の温度変動、また時期も1,2年で急激に変化しているそんなデータから、著者は太陽の公転運動、地球の地軸の傾きの変化、これらの10万年周期、2.3万年周期が遠因となって2重振り子の原理のような事象(周期性があるにはあるが、初期値がどこから始まるか判らない、結果ランダム事象)が起きて、気候変動が起こると推定している。
1万年前、わずか数年で7℃もの温暖化があった。何万年にも及ぶ過去を克明に記録した地層「年縞」が明らかにする驚きの地球気候史。人類は、たいへんな時代を生きてきた! 驚きの地球気候史
人類の気候の10万年史
http://pasopia.velvet.jp/nota2/nota/?20180224204734
本書より
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目次
第1章 気候の歴史をさかのぼる
第2章 気候変動に法則性はあるのか
第3章 気候学のタイムマシン―縞模様の地層「年縞」
第4章 日本から生まれた世界標準
第5章 15万年前から現代へ―解明された太古の景色
第6章 過去の気候変動を再現する
第7章 激動の気候史を生き抜いた人類
著者等紹介
○氷期と間氷期が繰り返す中、人類誕生以来、その歴史の大半は氷期だった。
○現代の温暖化予想は100年で最大5℃の上昇だが、今から1万1600年前、わずか数年で7℃にも及ぶ温暖化が起きていた。
○東京がモスクワになるような、今より10℃も気温が低下した寒冷化の時代が繰り返し訪れていた。
○温暖化と寒冷化のあいだで、海面水位は100メートル以上も変動した。
○縄文人はなぜ豊かな暮らしを営めたのか。
○平均気温が毎年激しく変わるほどの異常気象が何百年も続く時代があった。
○農耕が1万年前に始まった本当の理由。
「年縞」とは?
年縞とは、堆積物が地層のように積み重なり縞模様を成しているもので、樹木の年輪に相当します。2012年、福井県にある風光明媚は三方五湖のひとつ「水月湖」の年縞が、世界の年代測定の基準=「標準時計」になりました。世界中の研究が、その年代特定で福井県水月湖の「年縞」を参照するようになったのです。この快挙を実現したプロジェクトを率いたのが著者です。
「プロローグ」より
水月湖では、地質時代に「何が」起きたかだけではなく、それが「いつ」だったのかを世界最高の精度で知ることができる。タイミングが正確に分かるということは、変化のスピードや伝播の経路が正確に分かるということでもある。(中略)水月湖の年縞堆積物から気候変動を読み解くプロジェクトはまだ進行中であり、今も続々と新しい知見が得られつつある。本書ではそれらの新しい発見のうち、とくに私たち自身の未来と関連の深いものについて、なるべく分かりやすく紹介してみようと思う。