書名:あい 永遠に在り
著者:高田 郁
発行所:角川春樹事務所
発行年月日:2013/1/8
ページ:352頁
定価:1600円+税
幕末に上総生まれで、苦労の末医師となった関寛斎。その妻あいの一生を綴った物語です。同じ上総の貧しい農村に生まれたあいは、寛斎の養母から木綿の機織りを習っていた。十八歳のあいは運命の糸に導かれるように関寛斎と結婚する。銚子で医院を開き地域の患者を診ていたが、浜口梧陵というヤマキ醤油の店主の強い勧めでシーボルトがいる長崎に留学する。その間あいは銚子で留守宅を守っていた。その後徳島藩へ仕えて士分となり、藩主の覚えもめでたく、出世を果たすが、農民から士分に取り上げられたことで藩内でも反発が多く陰湿ないじめもあった。
戊辰戦争が起こったとき徳島藩は官軍にすぐ従軍したので関寛斎は医師として江戸、東北を巡った。また幕府軍、官軍を問わず治療に当たった。医者には敵も味方もない。ということで強引に治療した。これで新政府軍にも信頼され、政府の役人になるよう勧められるが、辞退して徳島に戻って民間の医療所を開く。そんな関寛斎に寄り添いながら、支えてきたあい。幕末から明治へと激動の時代を生きた夫婦の生涯を描いている。生きることの意味を問う。
北海道開拓を志した医師・関寛斎は北海道へ、四男又一は札幌農学校に在学。石狩樽川農場を開拓し、更に奥地である十勝国斗満の地に入植したのは、1902年(明治35年)72歳の高齢である。徳富蘆花とは交流があり、徳富蘆花『みみずのたはこと』司馬遼太郎『胡蝶の夢』などに描かれている。
4つの章は「あい」に掛けて、「逢」「藍」「哀」「愛」で構成されている。著者はみおつくし料理シリーズなどの高田郁の別の面が見られる。
徳冨健次郎 みみずのたはこと
http://www.aozora.gr.jp/cards/000279/files/1704_6917.html