書名:室町無頼
著者:垣根 涼介
発行所:新潮社
発行年月日:2016/8/20
ページ:530頁
定価:1700円+税
応仁の乱の10年ほど前の世の中を舞台に、時代の流れとともに既存の秩序が崩れつつ或る都の無頼たちが立ち上がる。骨皮道賢(ほねかわどうけん)と蓮田兵衛(はすだひょうえ)という実在の人物が主人公。そしてこの人物達を繋ぐ若者・才蔵がもう一人の主人公。骨皮道賢(ほねかわどうけん)は幕府から洛中の治安維持を任されていて、伏見稲荷神社を縄張りに活動している。その裏で土倉(金蔵)や関所を襲撃したりする極道の頭目だったり。蓮田兵衛(はすだひょうえ)牢人と洛外の村落をまとめて、一揆を起こそうとしている。足利の室町時代はあまり資料も残っていないので、よくわからないが、山城一揆とか一揆というのはどういうものかもよく理解できないところがある。この物語は百姓と支配者層のやり取りだけでない。また百姓は土地を持っている。支配者は税を取る権利を持っている。飢饉になれば百姓は土地を耕すのを放棄して逃げ出しても仕方ない。税を取る方も困ってしまう。その間にたって蓮田兵衛は交渉ごとをまとめていく。でも飢饉が毎年続くとそうも行っていられない。向田神社、相国寺(この当時七重塔高さ90mがあった)、東寺を一揆の拠点として使う。この一揆は農民、浪人など武士と呼べない人々が烏合の衆のように集められる。それをマネージメントして戦略として活用した蓮田兵衛、才蔵
主役なき人々の息吹が感じられる作品です。この辺りの戦いから足軽(農家の次男、三男でもいい)の活用法が出てきた。よくわからない室町時代の風景が見えてくるような感じがします。少なくとも今のように役に立たない人間はいらないではなく、その存在だけで許容される仲間たち、暮らしがある。この作品には作者の優しさがあふれています。何でも時代小説は2作目とか?長編ですが一気に読んでしまいました。足利幕府は江戸幕府と違って支配して税金が取れるところが畿内だけぐらいで意外と質素な政権。それでも金閣、銀閣など日本文化の原点になるような道楽に使うお金はあったようですね。その代わり無頼の徒も一杯いたこと、そして幕府がしっかりしていないので自分たちでやるしかないと立ち上がった骨皮道賢と蓮田兵衛が活躍出来たのでしょう。
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