書名:走狗
著者:伊東 潤
発行所:中央公論新社
発行年月日:2016/12/25
ページ:515頁
定価:1700円+税
明治維新の時代今から見てもそれ以前から見てもイヤな奴がいた。旧体制は儒教の精神が残っている時代、洋行して西欧の新しい考え、行いなどを真似だした疑似模倣の輩、そんなイヤな奴の一人川路利良警視庁大警視。下級武士の貧乏な生まれで西郷隆盛に取り立てられ出世していく。それも立身出世が目的の男。そんな輩に警察権力を持たせた。それがどうなっていくか?川路利良を主人公に細かく描いている。500ページの長編。西郷隆盛を裏切って大久保に、明治の元勲と呼ばれる人々で生き残った人は殆ど尊敬できない人ばかりですが、この川路利良など最たるものかな?もっとも著者はそれなりに持ち上げながら物語を薦めていますが。最近韓国の動きを見ているとやっぱり儒教の国、義理と人情の国、法律より地縁・血縁を大事にする。明治の人々は殆どが義理と人情、西郷隆盛にしても江藤新平にしても、でもそこで冷めていた人間がいた、大村益次郎とか川路利良とか日本は法治国家だ。富国強兵こそ国是と義理人情も地縁・血縁も無視した人物それが川路利良。そしてシークレットポリス(特高警察)組織を作った人。これが戦前の中でどんな役割を果たしたか?長い長い物語ですが、読むのにしんどい本です。辟易してくる本ですね。余りお勧めではない本ですね。著者は悪くないだろうけれど取り上げた人物が良くなかったか?
参考
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そうく【走狗】
人の手先になって働く者をいやしんで言う語。
狡兎死して走狗烹らる(こうとししてそうくにらる)
(すばらしい兎(うさぎ)が捕り尽くされれば、猟犬は不用になって鍋(なべ)で煮られることから) 人も不用になれば惜しげもなく捨てられることをいう。中国の春秋時代、越王勾践(こうせん)を助けた功臣の范蠡(はんれい)が、のちに勾践を見限って野に下ったとき、もとの同僚の大夫の種に書簡を送り、越にいては危険であるから、あなたも野に下りなされと勧誘したときに用いた句。
[本の森 歴史・時代]『走狗』伊東潤
https://www.bookbang.jp/review/article/526944