書名:山月庵茶会記
著者:葉室 麟
発行所:講談社
発行年月日:2015/4/21
ページ:275頁
定価:1550円+税
この本は2回目です。「風かおる」という物語と似たような話で展開方法も同じような感じです。著者は残念ながら亡くなってしまいました(享年66歳)が、2005年デビュー、そしてすごい量の作品を次々と書いていました。そして2017年に亡くなってしまう。晩期大成型でありながら一気に駆け抜けていったという感じもします。この人は九州の出身で、九州を舞台にした作品が多く、楽しませていただいていました。この本は文章の流れがすごく良い。流れるような文章で読者を心地よい気持ちにさせてくれながら、結構、酷いシーンをさりげなく絡めてくる。なかなか面白い。
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「陽炎の門」、「紫匂う」につづく、「黒島藩シリーズ」の第3弾目です。九州豊後鶴ヶ江の黒島藩を舞台に柏木靭負(ゆきえ)が主人公の作品です。柏木靭負はかつて、黒島藩の勘定奉行を務め、400石の身分であり、当時藩内を二分した派閥の一方の領袖として将来を期待されていた。だが政争に敗れ失脚する。妻の藤尾(享年36才の若さ)が亡くなったのを機に親戚の松永精三郎を養子として迎え、松永精三郎に家督譲り。奥祐筆頭、白根又兵衛の娘、千佳と娶せると突然京に上る。京で表千家七代如心斎に師事し、茶人として名をなし孤雲と号し、京から江戸でる。
柏木靭負(孤雲)が16年ぶりに故郷に戻ったところから物語は始まる。16年前の靭負が藩の重要な使命を帯びて
江戸に赴いていた間に起きた事件。妻藤尾は自害してしまった。「山月庵」という茶室を舞台に当時の関係者を茶に招きながら、その謎に挑む物語です。最後にはあっというドラマが、このあたりが葉室麟劇場か?