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陽気な客

書名:陽気な客 「苦楽」
著者:山本周五郎
発行所:苦楽社
発行年月日:1949/8
青空文庫
定価:0円

この作品は戦後1949年発表、この時山本周五郎はもう作家だったのですね。まだ生まれていない頃のことです、仲井天青という人が亡くなったという一文から始まる短い短い随筆です。そして仲井天青は著者が若い若い頃往き来をしていた友人で遠慮会釈無く言い合っていた。でもあるときからほとんど往き来がなくなった。又消息も不明。仲井天青の人生では本の一瞬の出会いに山本周五郎があった。そんな彼のことを微に入り細に入り書いているやっぱり作家の文章力は凄いと思わせる。何気ない一コマをここまでかけるというのは凄い。
この本に山本周五郎が取り上げなかったら仲井天青という人は名も知られず、埋もれてしまった人になったでしょう。この一文で本の片鱗を残した。

[仲井天青]という人物が死んだと聞かされるが、周五郎には心当たりがない。昔劇団を主宰していた人で、山本周五郎が神戸の出版社で働いていた時の同僚。その出版社というのは、「神戸夜話社という怪しげな雑誌社」。
 その社は元町通りと栄町の電車通りをつなぐ狭い横丁の喫茶店の二階にあった。もちろん古い木造の日本建築で、表に面した六帖二間をぶっとおして、古畳の上に机と椅子を並べたのが編集室なんだった。……