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恩讐の彼方に

書名:恩讐の彼方に 「菊池寛 短編と戯曲」
著者:菊池 寛
発行所:文芸春秋
発行年月日:1988年3月25日
青空文庫
定価:0円

禅海(1661年~1774年)という江戸時代の僧侶がモデルになっています。禅海は危険な橋から民の命を守るため、後に青の洞門と呼ばれるトンネルを30年かけて開削した人物です。

物語は
中川三郎兵衛という旗本に仕えていた市九郎は、主人の妾と恋に落ちる。それを知った三郎兵衛は市九郎に斬りかかるが、市九郎はこれに応戦し、逆に主人を殺してしまう。妾と逃げ出した市九郎は、盗賊や追い剥ぎなどをして生きるが、若い男女の商人を殺害したとき、突然人殺しを悔やみ出家する。

僧になった市九郎は修行を積つみながら全国を行脚し、豊前の「鎖渡し」という山越えの難所で人が落ちて毎年10人くらいの人が死ぬことを知る。この断崖を安全に通れるように己1人で、断崖に杭を穿ち洞門を掘り進める。二十一年間掘り続け、最初は笑っていた村の者も協力し、遂に完成が近くなった頃、旧主人の中川三郎兵衛の息子・実之助が父の敵討ちにと、市九郎を苦難の末、探し当てる。この敵討ちの最後の顛末が 「恩讐の彼方に」というタイトルになっている。「恩讐」という言葉は、「情け」と「恨み」を意味します。その「彼方」ですから、「情け」や「恨み」超えた先にというエンディングです。

菊池寛 恩讐の彼方に
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