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彦左衛門外記

彦左衛門外記
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書名:彦左衛門外記
著者:山本 周五郎
発行所:英高堂出版
頁数:244ページ
発売日:
定価:129円 Kindle版

天下の御意見番、大久保彦左衛門のことはよく知られているが、この天下の御意見番、実はうさんくさい。大久保彦左衛門は徳川家康の家臣で家康とともに歴戦に参加して色々な手柄を上げて、家康から自分がいなくなったら、将軍秀忠、家光の御意見番に任命するので指導するようにと言い置かれた。という事になっている。

この物語の主人公は主人公の五橋数馬というとぼけた男、三千石の旗本内藤家の末っ子だった。が、十六歳の時、母方の五橋家七百石の養子になった。700石の旗本となる予定の五橋数馬、ある日剣術の試合で奥平家(大名)の三女ちづか姫に出会った。一目で恋をしてしまった。数馬は濠をのりこえて大名邸への夜ばいにいき、成功して姫の身心をえたが、十万石の姫君と七百石の旗本では身分があまりにも違いすぎだから結婚は非常に難しい。
そこで奇想天外、で奇抜な方法を試みる。

それは市井に隠棲していた大伯父の大久保彦左衛門をおだてあげ、戦記を捏造し、なき家康のお墨付きを偽造して天下の御意見番にしたてあげてしまう。そして自信もなく、失意に暮らしていた大久保彦左衛門もおだてに乗って、ねつ造された自分の武功を誇りだした。さてちづか姫と数馬はどうなるか?

本文より
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「人間は一生にいちどは断乎たる行動をとるべきだ」

「人間は意志によって行動する動物だという。たいそう乙な定義であり、一面そのとおりかもしれないが、いつもそうとばかりは限らないし、肉体や本能の支配に負けた結果、あとで臍(ほぞ)を噛むどころか、足の踵(かかと)でも噛みたくなるほど後悔することも、決して稀(まれ)ではないようだ」

「人間はときどき、自分が万象と一体のなった、という霊気のようなものを感じることがあるものだ」

「世間から不良少年とか、よた者などと云われるような人間ほど、自尊心ということに敏感である。自分が世間からはみ出ている、というひけめが絶えず意識の芯にあるので、人の軽侮や嘲笑はびりびりとこたえる」