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小笠原壱岐守長行

小笠原長行

小笠原壱岐守長行 - 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1057938

徳川幕府最後の老中小笠原長行の伝記が国立国会図書館デジタルコレクションに収録してある。藩主の息子に産まれ、幕府の老中を経て、箱館戦争に参加、その後はぷっつりと隠遁生活ちょっと興味を引く人物です。写真を見ると頼りない弱々しいいい人、優しい人に写っているが、幕末維新明治の動乱期を生きてきた人生を振り返るとなかなかの人物だったらしい。

晩年、長行は息子の長生に、「俺の墓石には、声もなし香もなし色もあやもなし、さらば此の世にのこす名もなし」とだけ刻んで、俗名も戒名もなしにしてもらいたいと言ったという。

また、その辞世の句は「夢よ夢 夢てふ夢は夢の夢 浮世は夢の 夢ならぬ夢」という変わったものだった。

藩主の子として生まれ、「廃人」として育てられた長行は、その優れた才覚により幕府の老中までのぼって激動の世の中を動かした。しかし時勢によって幕府は倒れ、賊とされてすべての功績は消されてしまった。ならば、自分が此の世にいたことに何の意味があったのか――。そんな長行の悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。

晩年、長行は「與人異七事」という漫言を記している。自分が他人と際だって異なるところを七つ書き記したものだ。

小笠原長行は、明治二十四年(一八九一)一月二十二日に死去した。享年七十であった。
徳川幕府最後の老中がたどった「数奇な運命」。維新後は20年もの隠遁生活に
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