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阿片王

書名:阿片王
   満州の夜と霧
著者:佐野眞一
発行所:新潮社
発行年月日:2005/7/30
ページ:445頁
定価:1800 円+税

里見 甫(はじめ)、ジャーナリスト、実業家。関東軍と結託しアヘン取引組織を作り、阿片王と呼ばれた。中国名李鳴。里見は「電通が今のような広告会社になったきっかけを作った一人である」佐野眞一の力作、取材の仕方が凄い、この里見甫のことを調べるために、関係者を100人以上インタビューしている。戦前、戦中、満州、上海の里見の関係者を捜しながらこの里見甫を追いかけていく姿はちょっと感動ものです。

児玉誉士夫、笹川良一などは戦後にも顔を出しているので知っているかもしれませんが、中国で阿片の取引を行って、関東軍の有力な資金源として供給していた里見機関のことは殆ど人は知らないことだと思う。A級戦犯容疑で逮捕されたことはあるが、起訴されずに釈放された経験を持つ。戦後は全く顔を出してこない。沈黙の人里見の生き様を追っている。戦後の高度経済成長のベースとなったのは実は新しい国を創造しようとして「満州国」の建設に関わった人々、甘粕正彦、石原莞爾、岸信介、佐藤栄作などなどが阿片で巨額の資金を作って「満州国」に投入していた。

イギリスと戦争で有名なアヘン戦争。実は昭和の日中戦争も時を変えたアヘン戦争だった。満州という国は日本の13倍の広さの国。真っ赤な太陽が地平線に落ちるところ。そこには裏の世界が夜と霧が渦巻いていた。その中で関東軍、中国人の闇世界、満州国、蒋介石、共産軍それらら入り交じってアヘンという資金源をつかった。紛争をおこなっていた。そんな中で、阿片王という綽名で呼ばれるようなった里見甫の人脈の広さ、戦後総理、政治家などごろごろと出て来る。児玉、笹川のような私欲はまったくなく。戦後は全く闇の中で過ごした里見甫。

この里見を探ることで日中戦争をより深く見えてくる。また今まで表に見えていた事ばかりから考えるととんでもないことが実は真相ということが分かってくる。表のことより裏は複雑怪奇、大義名分ばかり追いかけていては歴史は分からないということを佐野眞一は暗に語っている。興味をもって読み切ってしまった。