書名:トンデモ偽史の世界?
著者:原田実
発行所:楽工社
発行年月日:2008/9/19
ページ:333 頁
定価:1800円+税
正史と偽史、どれが正史で、どれが偽史かと真面目に考えると「はっと考えてしまう」一応世界最初の正史は司馬遷の紀元前91年の「史記」と言われている。正史というのは国家が正統と認めたという意味しかない。国家の歴史の中で、まったく事実のみを忠実になどったような歴史は全くない。その時の政権、国家にとって一番都合の良い歴史が綴られる。
だからと言って何でもありの世界という訳でもない。しかしこの本で紹介されている古史小伝と呼ばれる宮下文書、武内文書等の幼稚なウソ、ユダヤ陰謀説の発生した理由。ソロモンの秘宝などフィクションとしては非常に面白いものですが、実際の歴史とは全く違っている。それを知って楽しむのであればいいけれど、国民、世の中全部が信じさせられてしまう情熱が偽史には内在している。2000年11月に発覚した前期旧石器時代跡偽造事件は世間をあっとさせた。
当事者藤村新一(50)は過去20年に渡って次々と発掘するところ全てと言って良いほど、前期旧石器時代の年代を更新(どんどん古くなっていく)した発見を行っている。それを考古学会は賞賛はしたけれど、誰も疑問を挟まない異常な雰囲気で、結果的には発掘現場に置いた毎日新聞の隠しカメラに遺跡に石器を埋めている藤村氏の映像が映っていた。この証拠で言い逃れができなくなって認めたというもの。
権威あるものが一度認めてしまうと、それに異論を発言することは大変勇気がいること。またのけ者にされてしまう。どこかの学会でも同じような話がある。ど素人の発表した「沈黙の春」湖の汚染が進んで性が逆転したりする生物が出て来る。これは汚染のせいだ。有吉佐和子の「複合汚染」環境ホルモン、テレビ朝日のダイオキシンは猛毒、ゴア副大統領の「不都合な真実」、最近では「温暖化の原因はCO2」どれもど素人に、専門家すっかり騙されて、それが正統派として、それに対する異論は全て抹殺する。その学会からいじめを受ける。でも時間が本当のところを見せてくれる。これは人間の一生(約80年)も要らない。それまでに大抵真実が見えてくる。
歴史の話でも、科学の話でも普通意見は自由であるべき、また議論の仕方があって、理論的に間違いがあったら訂正するというのが当たり前の考え方であるが、実はそれは絵に描いた餅で、実際は自分の信じることは絶対変更しない。相手は間違っている自分の説が正しい。これでは議論はできない。これはいろいろな問題の賛成派、反対派の議論をみているとよく分かる。国家間の歴史の話になるとまったくどうしょうもない。韓国、中国、日本の歴史感はののしりあいしか残らない。
この本を読んで感じるのは正統派を批判する方はなぜか?正統派の裏にフリーメンーソンがいる。その裏にユダヤ人がいる。ユダヤ陰謀説、最近ではアメリカの陰謀、アングロサクソンの陰謀と。現在からの視点で歴史を操作したい人々が一杯いるようです。なかなか面白い本でした。