書名:小栗上野介の秘宝
著者:典厩五郎
発行所:富士見書房
発行年月日:1995/12/10
ページ:316頁
定価:583円+税
明治六年、明治新政府は新一円札の偽札事件で大きく揺れた。元江戸北町奉行所の与力であった秋庭圭次郎は31才、維新を迎えて新時代になった時、ほとんどの与力・同心たちはそのまま市制裁判所に横滑りして、東京の治安をあずかった。
でも秋庭圭次郎はそれをこころよしとはせず、新時代に背を向けて市井の底で生きてやろうと、賭博に身を持ち崩していた。そんなある日、自分の下で同心を勤めていた片山新之介と再会する。
片山は陸軍省を舞台とする大がかりな汚職事件を追っていたのだが、新一円札の偽札も絡んでいることを突き止める。秋庭圭次郎に昔とった杵柄で相談に乗ってくれと頼んでくる。それをすげなく断ってしまう。その片山がその数日後に死体となって発見される。その事件にクビをつっこまざるを得なくなった秋庭圭次郎が与力時代の手下を使って、明治新政府を揺るがす大きな事件を解決に導くという壮大なドラマ。
高橋泥舟、山岡鉄舟、江藤新平、井上馨、西郷隆盛なども登場してくる。井上馨が小栗上野介が隠したとされる埋蔵金500万両を求めて秋田藩の鉱山へ大臣の職を辞めて出発する。典厩五郎の時代考証など見るべきものがある。ロマン溢れる作品です。江戸時代がいっぱい残っていたり、横浜などの西洋の匂いがいっぱい。
シナリオライター出身の作家は多いがこの典厩五郎もシナリオライター出身。1939年東京生まれ。池上金男は池宮彰一郎、池田一朗は陸慶一郎、安井幹雄は南原幹雄。