書名:朱夏
著者:宮尾登美子
発行所:新潮社
発行年月日:2000/11/20
ページ:630頁
定価:781 円+ 税
宮尾登美子の自伝的な作品です。同郷の土佐から入植した開拓団の子弟教育にあたる夫、生後まもない娘とともに、満州に渡った綾子は18歳。わずか数ヶ月で敗戦を迎えるとは?昨日までの人間観、価値観は一挙に脆く崩れ去り、一瞬にして暗転する運命、忍び寄る極寒の冬。
戦後の満州から日本にたどり着くまでの530日を死生観、人間認識を吹き飛ばす衝撃力をもった小説です。満州には60万人の関東軍が駐留していて民間人を守ってくれるはずだった。でもソ連が国境を越えて進入した時には関東軍は逃げ去ったあと。民間人は自分たちで生きる、逃げる、どうするか?すべて決めないといけない。
でも今のように情報が無かったので、知らないことは強い「果たしてまだ、日本はあるのか・・?」開拓団の中でもすぐに日本に帰りたいと考えた人より、この満州でどう生きていけばいいかを考えた人も多かった。開拓団に参加した人のほとんどは日本に住むところが無い人。満州を終の棲家と覚悟してきた人が多かった。そんな人々が日本に戻れるようになるまでの生活、生き方など宮尾登美子の筆力で描いている。宮尾登美子の満州での経験など自伝と重なるところがいっぱいあるようだ。