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絶海にあらず

書名:絶海にあらず(上)
著者:北方謙三
発行所:中央公論社
発行年月日:2005/6/25
ページ:405頁
定価:1800 円+ 税

書名:絶海にあらず(下)
著者:北方謙三
発行所:中央公論社
発行年月日:2005/6/25
ページ:378頁
定価:1800 円+ 税

平安時代中期、伊予掾として四国に渡った藤原純友は朝廷(藤原北家左大臣忠平)の命により京都に「唐物」を送ることを邪魔する瀬戸内海の海賊の討伐に当たっていたが、海賊と思っていた連中は、唐物以外の通行を制限する政策により、やむを得ず海賊を行為を行っていた四国、九州の水夫達の集団ということが判ってくる。それぞれの頭目達と交流を図り、船の製作、操船などを習得していく。

そして土地と違って、海は誰からも制限されるものではなく自由なもの、誰でも自由に通行出来るべきだ。と考えるようになり、朝廷の唐物以外は制限するという方針に真っ向から反発する。伊予国日振島を根拠に1000艘の船と水夫を集め、唐物を運ぶ朝廷の貨物船(太宰府の国軍も)を沈めるともに、九州の米を京都に送る。

それをさばく商人のルートを開く、また新羅からの唐物のルートを切り開き、朝廷に反発する。海を舞台に藤原純友が大暴れする。男のロマンを感じさせる大きな大きな物語。自由人純友が遺憾なく描かれている。当時関東では平将門が兵を挙げ、2ヶ月で征伐されてしまったが、藤原純友は瀬戸内海、玄海灘などを舞台に2年に渡って朝廷を相手に反逆を繰り返す。

そして結末は小野好古(小野道風の兄)との戦い。でもこの物語では好古と裏取引をして、水夫達の生活手段の確保(海の航行に制限を掛けない)ということを条件に海賊を解散させ地元に引き上げさせる。好古は朝廷に戦いに勝ったと報告。純友は息子共に朝鮮半島に次の拠点に旅立っていく。

承平天慶の乱(平将門の乱と藤原純友の乱)は歴史でも本の少し出て来るだけであまり知らなかった。将門は首塚などで少しは知っていたが、純友については殆ど知らなかった。この本を読んでちょっと興味が出てきた。