書名:長良川
著者:豊田穣
発行所:光文社
発行年月日:1994/4/19
ページ:687頁
定価:980 円+ 税
豊田穣の自伝小説です。海軍中尉豊田穣は、昭和18年4月乗っていた飛行機(陸式)に被弾、不時着、漂流の果てに捕虜となる。丁度山本五十六が亡くなる1週間ほど前。昭和21年1月帰国。中日新聞に入社。豊田穣の生きた戦後を綴りながら、その場面場面に過去の思いが色濃くにじんでくる。旧日本軍には捕虜という言葉はなかった。自分の存在価値などない捕虜時代の日々の出来事、思いを深く重く綴っている。この小説は10年に渡って延々と書き綴られた作品。豊田穣の書かざるを得なかった思いがひしひしと伝わってくる。こんな人生もあったと思い知らされる。重い重い十字架を背負った一人の飛行機乗りの人生を生身で綴っている。極限状態に置かれたときの人間の振る舞いはいろいろあって、考えさせられる。じっくりと味わって読んだ。