書名:ゼロ成長の富国論
著者:猪瀬直樹
発行所:文藝春秋
発行年月日:2005/4/30
ページ:197頁
定価:1400 円+ 税
西武・堤一族を素材にした借金と土地というこの国の本質を描いた「ミカドの肖像」「道路の権力」の著書がある猪瀬直樹の作品。今たしか、東京都の副知事だと思う。この本はゼロ成長だった江戸時代後期に活躍した二宮尊徳の軌跡を追いながら、現代の日本の少子高齢化社会、ゼロ成長の時代をどう乗り切っていくか?猪瀬の処方箋が書かれている。
二宮尊徳は全国の小学校にも銅像が立っているが、そのイメージは柴を背に、本を読んで、勤勉、節約をと思っている人が多いだろう。また全く事蹟を知らない人も居るだろう。特に若い人だと戦前の暗いイメージ、破棄すべき対象かもしれない。江戸時代のゼロ成長の時代、士農工商の固定した観念ではなく、農業(当時の基幹産業)に、ビジネス感覚を持ち込んで複利のお金の運用の仕方、殖産興業に励んだ先人。その卓越した未来をみた実行力、提案力が今の時代の閉塞感を取り払ってくれると言う。
どの時代でも一緒で、当時二宮尊徳の業績を十分理解していても、やっぱり小田原藩本体は尊徳に改革を任せなかった。人間関係の難しさですね。猪瀬氏の提案も良いと言う人と反対派と別れるでしょう。またこれを実行するにはもっともっとどうしようもない世の中(地獄をみないと)をみないとなかなか採用されないでしょうね。昔は藩主が取り上げればなんとか出来た時代、そんな時代でも家臣の中には反対派がいっぱい輩出していた。今は自由主義。これからの舵取りの難しさ。本当の意味での政治家(権力を持った)が出て来る時代なのか?出てこない時代なのか?興味あるところです。
二宮尊徳は研究する余地をいっぱい残しています。自分のやったことを事細かに記録している。成功も失敗も。そんな中に参考になることがいっぱいあるようです。