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どこで日本人の歴史観は歪んだのか

書名:どこで日本人の歴史観は歪んだのか
著者:岡崎久彦
発行所:海竜社
発行日:2003/5/8
定価:1,500円+税

薩長史観
大正時代に内藤湖南(歴史家)が「実際世に行われている多数の歴史は多く薩長のために書かれたもので、いわゆる尊攘派の観方によって作られたものである」と言いました。
それまでの日本は封建主義で、真っ暗闇の中に閉ざされていて、それを明治維新で朝日が出たように明るくなった。そう言う史観が薩長史観。これは占領史観(太平洋戦争後の)それまでの軍国主義的封建主義的日本を全部明るくして朝日が昇ったように全部変えてしまったという史観。どちらも勝者の史観です。

占領史観を引き継いだのが左翼史観、1970年の安保で大体片が付いたのにまともな史観に戻るかと思ったら、自虐史観、それまでなかった国際問題。教科書問題、靖国神社。大抵戦争が終わって30年も立つと戦争の記憶はお仕舞いになる。教科書問題、靖国神社の問題は日本から持ち出した(左翼史観のマスコミ、出版、報道、日教組)のは1982年以降のこと。いまだに自虐史観は続いている。
 こう見ていくと明治維新以来の150年間は偏向史観ばかりです。この本はその偏向史観を取り除いて歴史の事実を見てみようという試みです。

 明治の自由民権運動(不平等条約を改正させるには民主的な議会が運営できる国だと言うことを世界に認めさせる必要があった)大正デモクラシー(聖徳太子に簡単な問題は独断で決めても良いが、重要な問題はみんなに諮って決めるべし)の時代は民主的な考え方が普及した時代)戦後のポツダム宣言でも国民にあった民主主義的な傾向を復活させると述べている。戦前真っ暗史観を信じてきた人にはちょっと抵抗のある本かも知れない。

 著者は日英同盟を破棄したことと、真珠湾攻撃が大成功に終わったことが日本にとっての悲劇。戦術には勝ったが戦略がなかった。真珠湾攻撃する前にハルノートを世界中に公開して、禁石油のことを大きくアピールして、これでは戦争するしかないという必然性を訴えた上での戦争突入、また硫黄島玉砕の時点でも戦争の落ち着き先を戦略として持っていなかった。と言っている。戦争が終わってから63年、歴史を考えるときに現在の解釈を加えないという原則を守った事実の検証をしても良い時代になってきたように思う。

落ち着くまでに必要なようだ。戦国時代が終わって100年位で元禄の文化が花開いた。このとき関ヶ原、徳川幕府成立時にいた人は誰も居なくなっていた。自虐史観に偏向された視点からの見方も一つあるけれど、それでは事実は見えてこない。ちょっと視点を変える必要があるように思う。

-----------本文より-----------
歴史というのは、人間と国家が必死になって生きてきた営みが重なった大きな流れで、その流れの中で戦争も平和も生まれます。その善悪、是非など軽々論じ得べくもないものです。
ドイツの歴史家、レオポルド・ランケは「みなさんは歴史から教訓を得ようとおっしゃる。しかし私は大それたことを考えていない。私がただ求めているのは歴史の真実だけだ」