書名:活断層
著者:堺屋太一
発行所:アメーバブックス
発行年月日:2006/12/10
ページ:422頁
定価:1900 円+ 税
日本の南沖縄近くの豊那味村(仮称)にCTS(石油備蓄基地)を建設するまでの物語。実際の話(著者が知り得た事実)が元になっている。日本有数の大規模施設として450万キロリットルの石油を備蓄するための基地。最初はこの村の村長と村会議長がある商社の主任を訪ねてくるところから物語が始まる。
名前も知らない小さな島、少しの農業(さとうきび)と沿岸漁業だけの島。そんな島にCTS(石油備蓄基地)の建設が決まる。村上げての歓迎で順調にスタートしたかに見えた建設工事。最初の歓迎ムードも段々変わってくる。それは色々なところで起きている反対運動の典型的な経過を辿る。
巧妙に仕組まれた反対運動の企画、実行の仕方など手に取るように判る。最後方に出て来るが、プロジェクトを遂行するは大抵初めての経験(企業であったり、県、国)であり、ノウハウの継承と言うことをしていない。プロジェクトが変われば担当者も変わる。それに比べて反対運動を扇動する反対運動のプロは熟練している。
公害、原子力、環境とテーマは違っても反対運動をするネタは尽きない。これを次々わたり歩く影の人物ここでは牧という生態分布調査員が重要人物として登場する。もうひとりの主人公商社マンの桐野。最初は反対運動の首謀者をつかめず右往左往しているが、ついに牧という人物に行き着く、今までの経験から牧はどこまで行っても影で操るだけだったはずが、気づかれてしまう。建設推進側と反対側のやり取りを遺憾なく描いている。
この小説をテキストにいろいろな反対運動を分析していくと基本的な構成が似てるように思う。こういう視点で反対運動を見ると反対運動側はいつも弱者のイメージだったが、実はプロ、建設推進側が実は素人ということが言える。1970年頃実際にあった話を元にしているので興味を持って読んだ。勿論牧に相当する人物も、桐野に相当する人物の実在の人物。著者は両方ともあったことがあるとか。現在どのように暮らしているか興味あるところ。