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日本史集中講座「鎌倉新仏教」編

書名:日本史集中講座
   「鎌倉新仏教」編
著者:井沢 元彦
発行所:徳間書店
発行年月日:2010/1/31
ページ:281頁
定価:1500 円+ 税

鎌倉新仏教が、世界の仏教・本来の仏教と著しく違うのは、それまで救済の対象に入っていなかった猟師や漁師そして武士など殺生をする人々だけでなく、女性まで含む大衆を取り込んだことです。・・・そこに日本人ならではの発想がある。

小乗仏教は自利の仏教、出家して妻も家族ももたず自己を研鑽して悟りを開く。釈迦が入滅後4,500年経って大乗仏教的な考え方が広まってきた。利他の教え。日本の仏教は聖徳太子の時代からこの大乗仏教が入ってきた。当初は天皇をはじめとする貴族などエリートのための仏教。庶民、女は蚊帳の外。最澄の天台宗は法華経の教えを母体に広まった。宇治の平等院を肇とする極楽浄土への信仰、当時は阿弥陀仏を観想(イメージ)する念仏が広まった。阿弥陀仏をイメージするために浄土庭園、浄土を著した図など、観想念仏することで浄土に導かれるという思想だった。この観想念仏できる人は貴族のような財力が沢山持った人に限られた。鎌倉時代の法然、親鸞、日蓮等は延暦寺で仏教を学ぶ。

その後、法然は阿弥陀仏は48の誓願を立てている。その一番に阿弥陀仏を念じれば極楽浄土につれていって貰えるということがある。そこで「南無阿弥陀仏」を唱えるだけで誰でも極楽浄土に行けると説いた。すべて仏に任せておきなさい。したがって「南無阿弥陀仏」を1回唱えることと10回唱えることどちらも変わらないと説いた。

それで大勢の信者が出来た。その思想をもっと進めたのが親鸞で、念仏さえ唱えればどんな人間でも成仏できるのであれば、出家、在家、武士であっても成仏できるということで世界で初めて僧侶の妻帯を認めた。(破戒僧)浄土真宗は親鸞の子孫が門主を務めている世界でも珍しい宗派です。「南無阿弥陀仏」というのは「阿弥陀様、あなたに帰依します」という意味。

日蓮は「南無妙法華経」をとなえれば誰でも成仏できると言い出した。「法華経」というのは教典のなかで一番重要な教典と言われているお経。法然、親鸞は阿弥陀仏に帰依と、しかし日蓮はお経のタイトルに帰依する。(これは少し考えるとおかしなものですね)でも「なんみょうほうれんけんきょう」と唱えればといった。また日蓮自身、菩薩だといいだし、他の宗派をことごとく非難しだした。

延暦寺の僧18万人が京都の21の日蓮宗のお寺を焼き討ちにした事件がおこったりした。織田信長が比叡山を焼き討ちにしたと非難する人は多いけれど、延暦寺にもそれなりの理由がある。道元は「弁道」という考え方を広めました。「弁道」というのは簡単にいうと「自分の事は自分でする」もともとは禅の教え。本場の中国でも忘れられている教え。日本にだけ残っている。日本人は法律でも武力でもなく、納得、和、道理に寄って動く。

歴史は部分部分の出来事を詳細に覚えるものではなく流れとして見るもの。今行っている歴史教育で歴史が好きになるわけがない。歴史には必ず思想、宗教がある。ということを前提にみないとわからない。日本人は法律でも武力でもなく、納得、和、道理に寄って動く。という視点をもつとよく見えてくる。

日本の仏教のことが非常によく分かる本です。この本でアウトラインを知ってから、それぞれの教えをもう少し詳しく研究するのもいいのかなと思います。指南書的な本です。