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真理先生

書名:真理先生
   武者小路実篤集
著者:武者小路 実篤
発行所:幻冬舎
発行年月日:1976/10/15
ページ:486頁
定価:6000 円+ 税

「真理先生」「お目出たき人」「幸福者」「友情」「わしも知らない」「人間万歳」「だるま」「愛欲」「新しき村に就ての対話」他を掲載している武者小路実篤集です。
「真理先生」は私が高校の時読んで以来数十年ぶりに読みました。登場人物は真理先生(村野誠)、白雲先生、泰山、私、真理先生はいつからかお金というものを持ったことがない。誰かが食事選択の世話をしてくれる。お金については後援会のような組織を作って誰かが集めているらしい。

白雲先生は日本画を描いている結構売れっ子、泰山は白雲の弟で書道家、私は小説家というシチュエーション。それぞれ自由業で気楽な人たちが日々交流しながら過ごしている様子を描いている。それともう一人実は主人公馬鹿一、この人は石、雑草の絵を一生懸命、真剣に描いている。下手な絵なのですが、でも何かある。白雲は自分の絵より「凄い」と感心している。そして石、雑草ではなく人を描いて見たらと、自分が使っているモデル杉子を馬鹿一のところに通わせる。これらの人々がちょっとした出来事を起こしながら、それぞれに生きている。何となく素朴な人たち、お金とは無縁な生活を綴っている。
戦争が終わった昭和24年の作品。そこには自由、正義、権利、平和などを武者小路実篤自身がどう受け入れていくか、苦悩の後が見える。発展途上の作品か。今読んでもまた感動する。面白い作品です。