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逆説の日本史 16 江戸名君編 水戸黄門と朱子学の謎

書名:逆説の日本史 16 江戸名君編
   水戸黄門と朱子学の謎
著者:井沢 元彦
発行所:小学館
発行年月日:2009/10/19
ページ:451頁
定価:1600 円+ 税

 御三家のうち水戸藩はちょっと役割が違っていた。紀州、尾張は徳川家の血縁を繋ぐための将来将軍家に何かあったときには紀州、尾張からという役割。ところが水戸藩は将軍にはなれない。天下の副将軍にはなっても将軍にはなれない。徳川幕府が万が一倒れるようなことがあった場合、朝廷について天皇を守れという役割。(これは書いた物など残っていないがそう思われる徴候がいっぱい)。水戸光圀は大日本史の編纂(明治末期に完成する)朱子学を極めて日本独自の水戸学を確立。幕末の皮肉が、徳川吉宗の作った御三卿の一人徳川慶喜(徳川幕府最後の将軍)は実は水戸藩からの養子。勤王の志士と戦わずして大阪を脱出というのはやっぱり幕府より天皇の教えを守ったのか。

 この編は非常に盛りだくさん。日本の文化についても、日本の識字率の高さ、その原点は平家物語(琵琶法師)を聞いて民衆は読み書きの基礎が養われていた。その次に太平記、楠木正成の忠誠、浄瑠璃、歌舞伎、俳諧などがベースにあったところに寺子屋。勉強の基礎は耳学問から、そしてひらがな、カタカナの役割。中国も科挙など勉強すれば出世出来る仕組みはあったが、漢字を漢字として勉強できるのはある程度裕福な人だけ。それに比べて日本の場合、世阿弥のような貧乏な育ちでも聞いたことを平仮名、漢字として覚え、そしてレベルの高いところまで行ける。

井沢元彦の通史としてのたたき台を余すところなく示している。対象としている期間が結構ながいので、それぞれの関連性があった成る程と思わせるところが多々ある。しかし著者も書いているがここに上げた解釈が絶対ではない。読者がそれなりに考えてそれぞれたたき台を出してくれればと。少なくとも権威のある歴史学者の書いていることよりは納得するところが多い。