書名:菜種晴れ
著者:山本 一力
発行所:中央公論新社
発行年月日:2008/3/25
ページ:460頁
定価:1700 円+ 税
房州勝山の農家の娘である二三(ふみ)が主人公幕末のお話。二三の家は菜種を植えて油問屋に売るのが生業であった。た。両親と兄妹三人での平穏な暮らしが続いていた、ある日、母親よしの兄の新兵衛(江戸で油問屋を手広く経営している)後継ぎとして二三を養女にしたいとの申し出があった。江戸の油問屋勝山屋に養女と江戸深川に住むことになる。二三5才の時のこと。
そこでは、養父母からも大事にされ、奉公人、女中からも好感をもたれて順調な日々を送っていた。魚屋が大量の生きたエビを勝山屋に持ち込んだことから、二三が養父母に「てんぷら」を揚げてることになった。実母よしが天ぷらが得意で、いつも二三は実家で手伝っていた。これが滅法おいしく、養父母を感嘆させた。習い事、商売の方も覚えがよく順風満帆の人生に思えたが、15才の時、商売仲間と父親の名代として、江の島に出かけた時に悲劇は起きたのだ。なんと火大で江戸は焼け、勝山屋も、さらに養父母も失ってしまうのだ。失意の二三は立ち上がった。
江戸の市井の物語ですが、商売の鉄則、人と人のつき合い方、今でも十分通じるものですが、今では金、金、効率、効率で忘れられた大事な大事なものが、随所に出て来る。ビジネス書なんかよりずっとビジネスのことがわかるような本です。今ばかり追いかけている現代人に、基本的な事を教えてくれている。なかなかの力作です。