記事一覧

本に出会う

青春の十字架

書名:青春の十字架
著者:森村 誠一
発行所:中央公論社
発行年月日:2008/07/25
ページ:271頁
定価:1700 円+ 税

この作品は「純白の証明」「青春の雲海」につづく山岳三部作シリーズの最終巻です。ミステリーの舞台として山岳は大都会と対置するという設定。

穂高岳に登った後、上高地におりて梓川の河原から夕陽に染められた穂高を仰ぎ見る男、その隣に同じように穂高を眺めている女がいる。七夕のように連絡先も聞かずに、来年の再会を約して新宿で別れる。男とは2年前に失踪した妹を捜し続ける寒川、警視庁警護課のSP、要人警護につく寒川に、F県知事を巡る汚職の闇が迫る。連鎖していく事件。上高地で出会った幻の女へと繋がっていく。青春山岳ミステリー。久々の森村誠一です。昔と違って丸くなった森村誠一のような気がする。脳天に抜ける鋭さがなくなっている。

本書あとがきより
------------
青春は未知数が多く、熱っぽく、そして常になにか飢えている。この三要素を備えている者は、年齢に関わりなく永遠の青春を維持しているといえよう。
人生にとって青春は危険な収穫期である。危険を恐れていては収穫できない。また良い収穫ばかりとは限らず、悪い収穫もある。青春の大いなる志を危険に捕まって潰してしまった人もいる。それらすべてを含めて、青春はそれぞれの人生の中で最も輝いている十字架である。