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大川わたり

書名:大川わたり
著者:山本 一力
発行所:祥伝社
発行年月日:2002/1/30
ページ:300頁
定価:1700 円+ 税

 ちょっとした失意がもとで、賭場でど素人の若い流しの大工銀次が、わずか半年で20両もの借りを作ってしまう。賭場を仕切る猪之介から綺麗に返すまで住み慣れた深川から追放され、大川から一歩でも入ってきたら殺すと宣告される。そこで心機一転して立ち直りを決意。町道場で心身を鍛え、読み書きを習い呉服商の大店の手代になる。顧客の評判もよく、主人にも信用されるが、順風満帆とはいかない。男社会のねたみ、そねみ、そして奸計。気がつくと重大な危機に!

 一力の小説は人間を旨く描いている。読むとすぐその世界に引き込まれてしまう。第三者的な記述ではなく、作中の人物がそれぞれ生き生きと描かれている。生きている。やくざはやくざなりに、商人は商人なりに。人の生きる道をしっかりと示している。どうしょうもない人間もやっぱり脇をしっかりと固めている。