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本に出会う

太平記

書名:太平記(1)巻第一から第十一
著者:長谷川 端
発行所:小学館
発行年月日:1994/10/20
ページ:500頁
定価:4,657 円+ 税

書名:太平記(2)巻第十二から第二十
著者:長谷川 端
発行所:小学館
発行年月日:1998/03/20
ページ:500頁
定価:4,657 円+ 税

書名:太平記(3)巻第二十一から第三十
著者:長谷川 端
発行所:小学館
発行年月日:1999/03/10
ページ:500頁
定価:4,657 円+ 税

 年末から年始にかけて、平家物語などとともに有名な太平記を読んでみた。歴史資料的にはいろいろ問題がある本とも言われているが、鎌倉時代末期、足利幕府が成立する前後の時期の物語です。良く日本は万世一系の天皇が統治していたと誤解されている面も多々ありますが、この太平記では後醍醐天皇などはかなり馬鹿にされている。

学問、教養などはあるけれど政治家という意味では最低、まったく能力がなかった。朝令暮改も常時、決断の出来ない。決断してもまったく的外れ。遠慮会釈無く書いてある。でも足利尊氏は天皇を滅ぼして自分が実権を握ろうとはしなかった。タテマエでも朝廷は奉っていた。この時代に象徴的な天皇と実質の政権の分離が行われて今に至っているような気がする。古典でちょっと難しい所もあるが、なかなか味わいがある。じっくり読むには良い本です。
 
 人間後醍醐天皇がよく見えてくる。また楠木正成などもかなり小物に扱われている(ついでに書いてある)その後の人々が勝手に楠木正成像を膨らませてきたように思う。そんなに忠臣でもなかった。また足利尊氏は天皇から第反逆者のように宣伝されてきたが、じっくり読むと統治能力のない後醍醐天皇の行動に我慢強く、堪忍、堪忍していた様子もよく見える。ちなみに現在、天皇という名が一般的になっているが、125代全て天皇と呼ばれているように思われているが、推古天皇、天武天皇のいずれかから天皇と呼ばれ、平安時代末期からは院、江戸時代の末期光格天皇から天皇に。明治時代になって天皇と呼ぶように統一された。したがって後醍醐天皇ではなく、後醍醐院、花園院だった。

 今の日本人の思想の原点がこの鎌倉末期、足利時代初めにあるように思う。そういう視点で見ると太平記は第一級の資料価値があるのではないかと思う。後の時代の変な思想の眼鏡をかけていないだけ、当時が見えてくるのではないか?
31巻以降もあります。貸し出し中でまだ読めていない。