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大日本・満州帝国の遺産

書名:興亡の世界史18
   大日本・満州帝国の遺産
著者:姜尚中(カンサンジュン) 玄武岩(ヒョンムアン)
発行所:講談社
発行年月日:2010/5/27
ページ:331頁
定価:2300円+ 税

日清、日露戦争を舞台にした「坂の上の雲」も突然その時代が来たわけではなく、幕末から維新、明治の歴史、政治、体制、経済が脈々と続いている。その上で「坂の上の雲」のような上昇機運もあるのでは。太平洋戦争が終わった後の日本、韓国にもやっぱり「坂の上の雲」のような上昇機運の時代があった。それは戦前の満州帝国の時代から培われた体制、政治、思想が脈々と流れていた。

その中心に岸信介、朴 正煕(パク・チョンヒ)がいる。岸は満州帝国建設のために官僚として働き、戦後もその流れの中で、軍隊に翻弄されない強力な政治を目指して保守合同、55年体制の礎を築いた。また朴正煕は満州の陸軍士官学校を出て、日本陸軍の教育を受けて中尉で終戦を迎える。その後韓国で軍事クーデターで政権を取得、軍事独裁政治、権威主義体制を敷いた。どちらも終戦当時死刑になる寸伝までいった。また強い政府、政府主導で産業を興すという事業を行った二人。その背後には満州人脈が連なっている。戦後になっても満州を引きずっている。

そんな視点で書かれている。産業の振興が急務だった韓国、早急に日韓国交を正常化する必要があった。岸-朴のラインで決められた日韓国交正常化は矛盾も一杯あったが、戦後の日本、韓国の復旧を加速したのも事実。評価は色々出来るが、今後の世代がするだろう。ちょっと視点の違った歴史書です。