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著作権の世紀

書名:著作権の世紀
   変わる「情報の独占制度」
著者:福井 健策
発行所:集英社
発行年月日:2010/1/20
ページ:236頁
定価:720円+ 税

前著の「著作権とは何か」の続編。著作権は「作品」という情報を占有する最強の制度である。知的所有権の中でも特に最強。特許などは20年で無効となるが、著作権は著者が死んでから50年、欧米では70年。100年ほど前ならそんなに騒がなくても良かったが、現在のデジタル化、ネット化で情報の海が爆発的に広がり、作品の囲い込みは益々技術的に難しくなってきている。また著作物の独占(著作者の保護)と共有(みんなで利益を共有)のバランスはどうあった方が良いか?

そんな問題について著者の見識、世の中の動き、思想を紹介している。現在の著作権の問題ではなく、デジタル化、ネット化の著作権について深く考えている。NHKの過去の映像ライブラリーは全体の1%しか公開出来ていない。これも著作権の権利者捜し、承諾を得るため。映画に至ってはフィルムが劣化してしまうのに、アーカイブ化すらままならない。通常本の場合、著者が亡くなると90%以上絶版。本の一部しか利用されていない。しかし権利は50年、70年ある。人類の英知を必要な時、必要な人に利用するという視点が生かされていない。なかなか含蓄のある内容です。

この本でちょっと面白いと思ったのが「疑似著作権」という概念。例えばペットの写真をとって写真を発表するとそのペットの飼い主からペットの肖像権を主張される。また損害賠償を請求される例がある。でも法律上ペットは物。だから法律論でいくと全く問題はない。

でもその写真の掲載を取りやめているのが実情。本来著作権がないものにまで著作権があるような誤解、曲解がどんどん進んでいると著者は言っている。寺社の建物の撮影禁止なども寺社の建物は著作物ではない場合が多い。譬え創作性があるということで著作物であったとしても完全に50年70年以上立っているので失効しているのに、寺社には良く撮影禁止など看板が上げてある。もっと私有地に入っているからか?公道上からであればOKかな。

著作権というのは微妙なバランスの上に成立して概念だということが言える。家庭で使っている実用品の茶碗は著作物ではない。しかしある陶芸家が作った使い勝手の悪そうな茶碗は著作物になる。この判断は?
著作権についてある程度知識のある人にとって有用な本だと思う。著作権がよく分かっていないと思う人は前著をまず読んでから本書へ