記事一覧

本に出会う

天涯の船

書名:天涯の船(上巻)
著者:玉岡かおる
発行所:新潮社
発行日:2003/2/25
定価:1.600円+税

書名:天涯の船(下巻)
著者:玉岡かおる
発行所:新潮社
発行日:2003/2/25
定価:1.600円+税

 日本が激動した時代、明治、大正を波乱の人生を送った女性の物語。アンティークのオークションに絡む手紙から始まる。姫路藩家老の娘、美佐緒の身代わりのミサオとして、下働きの娘が蒸気船に乗せられアメリカに向かう。明治の女性が留学生活を送る。留学時代に知り合った桜賀光次郎(後の川崎造船所社長)、ヒンメルヴァンド子爵の2人と主人公ミサオ(実は菊乃)の波瀾万丈の物語、明治、大正、昭和という3つの時代と日本、アメリカ大陸、ヨーロッパにまたがる大恋愛もさることながら、近代化を進める明治や戦争へ向かう大正の日本の様相がミサオという女性の目を通して描かれている。松方コレクションで有名な松方幸次郎とドイツの公爵家へ嫁いだクーデンホーフ光子をモデルにした後も見られるが、なかなかの力作である。この作家も注目したい一人です。