書名:17歳のための世界と日本の見方
著者:松岡 正剛
発行所:春秋社
発行年月日:2006/12/25
ページ:363頁
定価:1700円+ 税
この本の続編が『誰も知らない 世界と日本のまちがい』です。17歳のためのとなっているが、17歳には少々難しい。表現はやさしいが、理解するには難解だ。この本は人間の歴史のはじめから、人類が二本足歩行をはじめたとき、ちょっと進化が早くて少しミスをしたのではないかと言われるのが、3つの脳をもったこと。「ワニの脳」(残忍な脳)「ネズミの脳」(狡猾な脳)その上に「ヒトの脳」がのっている。この3つの脳の矛盾が文化を生んだ。人が理性を持って生きようとするところから宗教が生まれてきた。世界の歴史、日本の歴史を辿りながら、縦横斜めに見る視点が新鮮だ。
足し算の文明、引き算の文化・・・わかったようでわからない。
今追いかけているのは物を持つ、お金を持つ、財産が欲しい等全て足し算の世界。しかし日本の枯山水のように水を取り去ったところに水を感じさせてしまう。引き算の文化。見渡せば花ももみじもなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ(見渡す限りなにもない。ただ苫屋の夕暮れだけ。でも花も紅葉をいっぱい感じる歌)室町時代に出てきた思想、芸能、文化はそれがいま、日本人の心、日本的と言われている原点。わくわくすることがいっぱい。大人がこっそり読みたくなる本です。この本も買って自分の手元に置いておきたい本です。
本書より
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人間とは何かといったら、生物です。すべての人間に共通していることは「生きている」ということですね。生物とは何かといえば生命です。生命体です。その生命とは何かというと、一言で答えるとすると「情報である」ということができることを考えてほしい。
「・・イエスがイエス=キリストとして活動していた期間は大変短くて、(略)せいぜいその五年くらいの活動です。(略)世界史上で活躍して大きな業績をのこした人物も、活躍の中心期が五年とか十年くらいにピークがあったということは、いくらでもある。けれども言い換えれば、本当に何かをやりたければ、この五年という期間は非常に大きいものなんです。ファミコンが広がったのも、ケータイ電話が広まったのも、五年もかからなかったでしょう。逆にいえば、五年もあれば、何だってできる。(略)
さらにいえば、イエスの五年間をある程度詳しく知っていたのは、ペテロ以下の十数人の弟子だけでした。前回話したブッダの最初の弟子が十人。釈迦十大弟子といいますが、でも結局はこの十人が仏教の誕生に、あるいは十二人がキリスト教の誕生に大きくかかわったわけです。ですから、何かをおこしたければ、最初の十人をまず作るべきなんです。そしてそのコア・メンバーとともに五年を集中するべきです。それ以上はいらない。幕末の吉田松陰の松下村塾だって、せいぜい二年です」