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本に出会う

本能寺

書名:本能寺(上)
著者:池宮 彰一郎
発行所:毎日新聞社
発行年月日:2000/6/25
ページ:307頁
定価:1600円+ 税

書名:本能寺(下)
著者:池宮 彰一郎
発行所:毎日新聞社
発行年月日:2000/6/25
ページ:307頁
定価:1600円+ 税

テレビドラマの製作などに長年関わっていた脚本家で、69歳で池宮彰一郎というペンネームで作家デビューしたが、司馬遼太郎の作品と非常に類似しているという事件で作家活動を停止した。といういわくのある作家です。脚本家だけあって誰でもが知っている「本能寺」を非常に面白い視点で見ています。明智光秀と織田信長とが初めて出会う場面から物語は始まります。当時、織田軍団には殆ど人(才能のある)がいなかった。後年になってもいなかった。織田信長は1を聞いて10,100を知るほど才気ばしった才人。明智光秀もそれと同じ位に頭の回転が速い。織田信長は頭が良いばかりではなく、発想が奇天烈。意外性がいっぱい。ついていく部下にとっては大変な大将。それをそつなくこなしていたのが光秀。司馬遼太郎ばりの物語の展開。

でも司馬遼太郎ほど押しつけてこないところが良い。何故明智光秀が信長に反逆したのか?作者独自の面白い説が見えてくる。新しい時代を作る織田信長、既存の価値観を全くひっくり返してしまおうとしている。それについていけない面々。キーマンとして細川藤孝、千利休、近衛前久、足利義昭の策謀、それに載せられた、豊臣秀吉、明智光秀。織田信長は秀吉は人に使われる人材として一級品。でも人を使う人間ではないとみていた。それに比べて自分の後を継ぐのは明智光秀と見ていた。このあたりが自分の子孫を跡継ぎに考えていなかったという作者は想定している。なかなか面白い発想。宣教師達から得た、地動説、ローマ帝国の歴史、政治体制などを十分知っていた。また理解していた信長ならではの発想か?生まれてくるのが早かった織田信長、「人間50年、夢まぼろしの如くなり」光秀も「55年の夢」ともに夢と消えた。

(本書より)
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人が秘す機密などは、人の口から必ず漏れる
人が作りだした困難は、人の知恵と努力で打開できない筈がない。
絶対的な権力は、絶対に腐敗する。
古今東西を通じての鉄則である。