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いのちの米 堂島物語

書名:いのちの米 堂島物語
著者:富樫倫太郎
発行所:毎日新聞社
発行日:20008/6/25
定価:2,000円+税

 前作「堂島物語」の継続編です。これもやっぱり原稿用紙1000枚を越える長編です。前作で駆け落ちに失敗した加保と結婚、吉佐(吉左衛門と名を改める)が能登屋という店をもって米仲買人になって帳合米取引を商う。この物語のクライマックスは西日本が大凶作となって米相場が急激に高騰したときの取引。手に汗にじるような展開、主人公の吉左衛門の苦悩、彼に資金を預けて運用して貰っていた人々の離反。破産寸伝まで追い込まれながら結果的には大暴騰した相場を上手く乗り切って大儲けをする。その後配当を配った人々の廓遊び、放蕩三昧の姿、一方農村の飢餓、年貢も払えない出身地の農村の生活を見て金儲けの空しさを深く考え込む。相場に興味をなくしていく。そして儲けたお金の大半を自分の村と近隣の村の年貢の立て替えのために融通してしまう。生きたお金の使い方に目覚めていく。そして堂島に店を大きくして出身の村の若者を丁稚に雇って次の商いに向かうところで終わっている。
 非常にテンポの良い筆運びで長編にも関わらず一気に読ませてしまう筆者の実力はたいしたものだと思う。