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考えてみれば不思議なこと

書名:考えてみれば不思議なこと
著者:池内 了
発行所:晶文社
発行年月日:2004/12/30
ページ:349頁
定価:2200円+ 税

 宇宙の歴史は150億年、太陽系は46億年、地球もほぼ同じ、これだけの時間がたって人類は必然的にこの地球に存在するのか?2億年ほど前には地球の自転は18時間で1回転していた。1年は448日、今は24時間。365日。2億年後は30時間。太陽も50億年後にはエネルギーを使い果たして太陽系の惑星を巻き込みながら消滅して、宇宙のゴミとなる。当然その時人類がいたとしたら一緒に消滅してしまう。大宇宙はそんな生成流転を繰り返していく、輪廻の世界。また宇宙の塵が集まって新しい星が生まれる。地球のような星も生まれるだろう。気長に考えてみると不思議なこと。

 科学は科学者それも細分化されて専門家ばかりで、文学もやっぱり専門家ばかりで科学で得た知見も文学で得た知見もそれぞれバラバラ、それを著者は統合しようと昔の自然哲学者のような立場、新しい博物学を目指すという意気込みでこんな本を書いている。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を題材に、物語の筋にそって天文学入門。今判っている最新の天文学を紹介している。また日本の四季を辿りながら万葉集、和歌、短歌、俳句を並べながら四季の植物、動物の科学を説明してくれる。読んでいてなかなか面白い。「文化は暇が創る」天候不順で狩りに出られなかった狩猟人が、洞窟に籠もって描いた「ラスコーの壁画」。エジプトのピラミッドも暇な人々の雇用を守るために、高度な文化を残している。
 天文が専門の著者ですが、雑学がいっぱいの面白い本です。