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持丸長者 国家狂乱篇

書名:持丸長者 国家狂乱篇
   日本を動かした怪物たち
著者:広瀬 隆
発行所:ダイヤモンド社
発行年月日:2007/7/26
ページ:466頁
定価:1900円+税

明治中期から昭和20年頃までの歴史を長者番付を参考に、いろいろな長者がどのような業種から出てきたか。それを追うことによって日本という国がどんな道を歩んできたかを探っている。長者という視点からみた歴史書。大作です。三国志より登場人物が多いのでは?新聞と製紙が開いた国家では王子製紙の誕生秘話。

渋沢栄一一族から三井財閥が王子を乗っ取った経緯。北海道開拓史では薩摩閥の統治、「いも閥」の飽くなき北海道開拓の歴史。鉄路は伸びるでは日本最大の産業にのし上がった鉄道、鉄道の国有化と満鉄の設立、利権に群がった長州閥。黒いゴールド・石炭と石油は九州の炭坑王3家(伊藤、貝島、麻生)。

貝島・麻生家が三井閥と結びつく。ガス灯が生んだ浅野財閥。越後の石油王、日本石油の発祥地は狩羽原発近く。電力王福沢桃介・松永安左右衛門の登場。植民地を動かした銀行と大事件では興銀、横浜正金銀行の動き。国家総動員体制と大政翼賛会では満州国建国に取り憑かれた無鉄砲集団、満鉄調査部が生み出した全体主義国家。

これらを長者の人脈図を作成して歴史に関わった人達を説明している。単純に表に出ている人だけで歴史を考えていると見えないが、人脈図の繋がりを見ると閨閥に属していることで能力もないのに総理大臣だったり、社長だったり、軍の大将だったりと違った見方が出来る。なかなか面白い。

「昭和史1926~1945 半藤一利」と合わせて考えると面白い。昭和の初め、大臣の不用意な発言から渡邉銀行の倒産、鈴木商店が倒産と昭和大恐慌の時、鈴木商店には閨閥はなかった。金子直吉という鈴木商店の番頭は給金、月給90円で世界でも大きな商社に育て、そして何の財産も残さず亡くなってしまった。希有な人物。閨閥づくりをしていったものが、財閥として残った。それは今も延々と続いている。この人脈図、閨閥を見ていくと歴史が見えてくる。経済も見えてくるというところもあるように思う。倒産した会社を三井、三菱、日産、日窒などの財閥がハイエナの如く買収する。企業買収は最近の出来事ではなく、当時もっとも盛んに使われた手法で、あくどいことをやっていた。やらなければやられるという弱肉強食の時代は今の昔も変わらないのか?