書名:百枚の定家
著者:梓澤 要
発行所:新人物往来社
発行年月日:1998/11/20
ページ:662頁
定価:2800円+税
百人一首を編纂した藤原定家が自ら、晩年一首ずつしたためとされる「小倉色紙」。この「小倉色紙」の真贋を巡って起こる殺人事件。鎌倉時代の初め、定家の孫の代で御子左家(二条家)から京極家・冷泉家が分かれ三家となったが、京極家、二条家は滅んでしまって今は冷泉家が残っている。定家が晩年に百人一首を編纂して「小倉色紙」を残したとされているが、贋作が多くて一枚も国宝、重文になっているものがない。ニューヨークのオークションで「小倉色紙」の1枚(淡路島かよふちどりのなくこえに)が高額で落札された。それも日本人の海野という美術商に。「小倉色紙」の展覧会を企画してた武蔵野美術館の学芸員の秋岡はその出所を調べ出す。明治の混乱期に日本から出されたのか?戦後のGHQの時代か?すると美術商の海野から電話が「淡路島かよふちどりのなくこえに」を美術館で購入しないかと。「小倉色紙」に詳しい大学教授、知人、関係者を回って「小倉色紙」について調べている内に、「小倉色紙」が11枚、岐阜の郡上八幡から出た。旧家の蔵の中にあったものだという。百枚の小倉色紙の謎をおった古代ミステリー。分析調査のアプローチがなかなか良い。面白い作品です。