書名:原発のウソ
著者:小出 裕章
発行所:扶桑社
発行年月日:2011/6/20
ページ:183頁
定価:740円+税
3.11原発事故後、マスコミに登場した御用学者、専門家はみんなウソを言っていた。だんだん事実がウソを明らかにしてきた。そして原発の危険性を訴え続けて40年”不屈の研究者”が登場する場面が出てきた。その発言は信頼性の高い、ぶれない視点からの発言。だんだんマスコミに登場する機会も多くなって来た。3.11事故後の福島第一原発の事故の原因、対応の仕方、今後の見込みについて。冷静に現状を分析して警告している。今一番信頼できる研究者ではないかと思う。MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に毎日のようにゲスト出演(電話で)して政府、保安院、東京電力の発表から独自の解釈を披露してくれている。
小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ
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今、福島第一原発はもう収束に向かっているのでちょっと安心だという風潮があるが、とんでもない。これからが大変なことだと著者は言っている。放射能の影響で避難している人達は何時帰れるのか?被曝の影響は?原発で汚染処理した放射能精製物の処理はどうするのか?著者が苦悩しながら真摯に語っている。強制避難地域とその周辺の一部はチェルノブイリと同じように数十年たっても元には戻らない。半減期30年の放射能が問題なくなるまで300年の年月が掛かる。
日本の法律に照らせ合わせれば強制避難地域には30年以上戻れない。しかしそこを生活の基盤として生きてきた人達を避難させるということは生活の基盤から人格、生き様など全てを奪うことになってしまう。汚染の状況をはっきり測定して公開することで、そこで生活したい人一人一人が選択することも必要では。ただ追い出すだけが政策ではない。
またそこで取れる農産物、水産物も食べる食べないは今後の日本人が決断していく大きなツケとなっている。そんな悲惨な状態に追い込まれてしまっているということを認識しないといけない。
石油は有限の資源、資源がなくなるから原子力を推進しないといけないと。みんな信じていたけれど、実はウランは石油よりも少ない資源。こんなものに頼っていて良かったのか?原発を全て止めても電力は足りるという現実。いままで盛んに言われていたことがウソ、ということを気づかせてくれる。
この放射能の問題はこれから長い長いつき合いをしないといけなくなる。そのためには本書を是非読んで、ダマされない知識を持って欲しい。自分で考える、調べる。自ら行動する。その羅針盤にしたい本です。
小出裕章さんは「知足=足を知る」をモットーにしている誠実、謙虚な人。特に出世欲、金銭欲とは縁のない人。で欲がないといえるかというと、やっぱり研究、知識というものにはものすごい欲を持っている方だと思う。
本文より
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私はかつて原子力に夢を持ち、研究に足を踏み入れた人間です。でも原子力のことを学んでその危険性を知り、自分の考え方を180度変えました。原子力のメリットは電気を起こすこと。しかしメリットよりもリスクの方がずっと大きいのです。しかも、私たちは原子力以外にエネルギーを得る選択技をたくさん持っています。私が「原子力が危険だ」と気がついたとき日本にはまだ3基の原発しかありませんでした。私は何とかこれ以上原発を造らせないようにしたい、危険性を多くの人に知って欲しい、それにはどういう方法があるんだろうかと、必至に模索してきました。