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本に出会う

枝豆そら豆

書名:枝豆そら豆(上)
著者:梓澤 要
発行所:講談社
発行年月日:2003/1/20
ページ:370頁
定価:1900円+税

書名:枝豆そら豆(下)
著者:梓澤 要
発行所:講談社
発行年月日:2003/2/28
ページ:335頁
定価:1900円+税

著者が初めて書いた新聞連載小説。大店の紙屋の一人娘(おその)と小間使の娘(菜津)、あだ名はそら豆と枝豆。
人間の運命の変転を描いている。2人が揃って同じ若者真之介に恋をする。お嬢さんの小間使い菜津はおそのの代わりに恋文を真之介に。真之介は旗本の3男坊。終生部屋づみのはずが、次男が養子に行く前に亡くなってしまった。代わりに真之介が福井藩の支藩秋津藩の藩主に懇願された、菜津を側室にと言う条件で藩主になった。

時が移って、秋津藩に帰藩した真之介が倒れる。すると家老などが氾濫、お家騒動に、嫡子を連れて菜津(夏の方)が、おそのと兄弟の手助けを得て、東海道を旅して秋津藩まで駆けつける。この道中が面白い。東海道往来という往来ものにそって物語が進んで行く。


東海道往来より
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【東海道往来:江戸より京都に至る53駅を七五調で詠みこまれているのが特徴の往来物】
都路は五十余りに三つの宿 時得て咲や江戸のはな 浪静かなる品川を やがてこえ来る河崎の 軒端ならぶる神奈川は はや程谷のほどもなく くれて戸塚に宿るらん 紫匂ふ藤沢の 野もせにつづく平塚も 元の哀れは大磯か  蛙なくなる小田原は 箱根を越えて伊豆の海 三嶋の里の神垣や 宿は沼津のまこもぐさ さらでも原の露はらう 富士の根ちかき吉原と ともに語らん蒲原や 休らふ由井の宿なるを 思い興津に焼くしほの 後は江尻のあさぼらけ けふは駿河の国府をゆく 暮に数ある鞠子とは わたる岡部の蔦の道 千とせの松の藤枝と よしや島田の大井川 渡る思ひは金谷とて 照らす光は日坂に 賑ふ里の掛川と かけて袋井ふく風の 登る見附の八幡とは 浜松がえの年久し 時雨し頃も舞阪を 遠近過る荒井の磯 袖に波越す白須賀も 本より名のみ二河や 浦ふく風の吉田こそ おもひ知れし御油の里  解にしはなも赤坂の 野田にやまさる藤川を 岡崎の宿いかならん 結ぶ池鯉鮒の仮の夢 覚る波間の鳴海がた ただここもとに熱田の宮  八十氏わたす桑名の海 道のゆくえは四日市 誓ひもかたき石薬師 庄野の宿り是ぞとよ 齢ひ久しき亀山と 留る人なき関ならし 賤が屋並ぶ坂の下 誰土山に座せしめん 群れたる露も水口に 濁らぬ末の石部かな 野辺はひとりの草津わけ 実もまもりの大津とは はなのにしきの九重に 心うきたつみやこぞと 君の寿祝ひたりけり 
かしこ