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風雲

書名:風雲
著者:海音寺 潮五郎
発行所:毎日新聞
発行年月日:1988/10/20
ページ:268頁
定価:1300円+税

久々の海音寺潮五郎です。昔は良く読んでいた。幕末の長州征伐の時代のひとときを海音寺流の物語の進め方です。やっぱり語彙が豊富、漢文の素養が良い。名文です。幕末は勤王論、佐幕論が争っていた。この2論に開国攘夷の相反する論が縦横に交差して、勤王攘夷、勤王開国、佐幕攘夷、佐幕開国と各派とわかれ、我が国未曾有の思想混乱時代。公武合体などという地球の両極を一致させようするような議論まであった。現代の人が幕末、明治を見たときわからない。当たり前である当時の人々もわかっていなかった。西郷隆盛、勝海舟、坂本龍馬などは脇役で、桂小五郎、高杉晋作、久坂義助、真木和泉の長州の人々が主役。公家七人が長州へ落ちていった。長州征伐の議論が徳川慶喜、宮中を中心に起こる。そんな時代を描いている。薩摩の出方、会津の出方、虚々実々のやり取りなかなか面白い。