書名:沈黙野
著者:米山 公啓
発行所:講談社
発行年月日:2000/2/29
ページ:318頁
定価:1800円+税
神奈川県のある私立大学付属病院の助教授窪田が主役、もうすぐ教授が定年、教授選挙を控えたある日窪田の高校生の娘が自殺してしまう。もう少しで教授にというところで、妻と子どもは別居。仕事仕事、研究研究で過ごしてきた窪田には教授選挙には必ず勝たなければと、論文ももう少し書いておかなければと高額の実験装置を得るために製薬会社からリベートの為に新薬の治験データの捏造。元勤務医が描く物語です。
本文より
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病巣があっても症状がでない脳の部分を沈黙野という。大学病院の医者たちは旧弊に流され、自ら改革を拒否し、大学内部には寂寥たる沈黙野が広がっている。しかし、市場開放という名の巨大な波は、銀行、証券会社を呑み込み、いまや医療の世界にも近づいている。日本の医療が崩壊する前に警鐘となる小説を書きたかった。ここに書いたことは近い将来必ず起こることだ。それでも彼らはその日まで沈黙を続けるつもりなのだろうか。──米山公啓