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裏太平記

書名:裏太平記
著者:半村 良
発行所:河出書房新社
発行年月日:2009/2/28
ページ:304頁
定価:1800円+税

時は末世、鎌倉滅亡前夜。大火、大地震が続き、ハルマゲドンが近づいてと都の人々が思い込んでいた時代。天皇位争いに、大覚寺統、持明院統に別れ、結果的に北朝、南朝の並立の時代を迎える。ここに一人の主人公として吉田神社の占部兼好(吉田兼好)、徒然草の作者と言った方が判りやすい。これは後年の頃の話。若い頃は宮廷の役人として活動。この物語は裏で下剋上の思想的根拠。宋学(朱子学=儒教)から徳のない領主は滅ぼして、取って代わっても良いと。身分の低い人々を扇動しての活動がある。後醍醐天皇もやっぱり宋学の影響を大きく受けている。

建武の中興その裏に仕掛けをした人物がいた。醍醐寺の大覚、実は醍醐寺は当時僧兵、政治の世界でも強力な力を持っていた。下層の人々を組織的に動かしていた。その裏の裏に吉田兼好、兼好法師がいた。

そんなネタと時代を上手く物語っている。半村良の語りの世界を楽しませてくれる。現代の語り部を遺憾なく発揮した作品だと思う。あくまでフィクションですが、どこか真実だったのではと迷わせるところが、なんとも言えない。