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こうして原発被害は広がった

書名:こうして原発被害は広がった
   先行のチェルノブィリ
著者:ピアズ・ポール・リード
訳者:高橋健次
発行所:文藝春秋
発行年月日:2011/6/30
ページ:406頁
定価:1524円+税

この本が日本で出版されたのは1994年、福島原発の事故で緊急復刻された本です。原本は絶版になっています。チェルノブィリ原発が原子炉の爆発から放射能飛散、必至の封じ込め作戦、急性被曝による死、情報統制、大規模避難、被害補償、政権内の暗躍、事後処理の失敗、失策を重ね国民の信頼を失ったソ連は崩壊へ。

レベル7最悪の状況で人々はどう動いたのか?ソ連の戦前からの核開発、米国と核兵器競争、平和利用としての原子力発電所の開発の歴史、主要な技術者、共産党幹部の動き。ベールに包まれた原発の開発体制、政治体制など秘密主義の中で事故は起きた。その後の振る舞い方は日本の福島でもやっぱり同じだった。自民党によって進められてきた原発の推進、事故後の民主党の決断力のなさなどソ連のチェルノブィリ原発対応となんと似ていることか?

 この本ではその後の25年はまだ書かれていないがその後発生するであろう低線量被曝の影響、汚染されてしまった土地の将来を暗示している。原発の事故の技術的な事故原因、被曝量の数値などはほとんど追求せずに、事実だけをドキュメント風に綴っている。チェルノブィリ原発事故の全容がよく分かる。また福島の今後も十分推測できる内容だと思う。チェルノブィリ原発の事故は日本人には全く日本では起こりえないと思考停止してしまった。これが福島の事故を招いてしまった。この本を自分の事として読んだ原子力関係者、推進派がいれば少しは対応が違ったのではないかと残念でならない。