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百年の亡国

書名:百年の亡国
著者:海道 龍一朗
発行所:実業之日本社
発行年月日:2006/9/25
ページ:508頁
定価:1900円+税

太平洋戦争敗戦後の日本、マッカーサーが日本に進駐してきた時代。連合国各国の思惑の渦巻く中、ソ連スターリンとアメリカのトルーマン、そしてマッカーサーの思惑、それらが日本の戦後処理に関わってくる。その中で内閣法制局の官史立木一郎の回想録のように物語を綴っている。本来国家百年の計として定めざる得ない日本国憲法がどう制定されたのか。その課程を詳細に物語っている。

ソ連のスターリンを中心とする連合国が日本の統治に口を出してくるという切羽詰まった時期に、マッカーサーは連合国、本国トルーマンからも口を出させない為に、日本が主体的に憲法を作成したという実績をつくるために、幣原内閣、吉田外相にホイットニーを通じて圧力をかけてくる。そのやり取りは壮絶なものがある。進駐軍側から日本国憲法の見本を見せられて、それをベースに日本側との駆け引き、しかし強者進駐軍には屈するしかなかった。そんな屈辱的な日本国憲法の成り立ちを綴っている。戦後66年たってもその時作られた憲法がそのまま今でも生きている。そのやり取りの場に一官史として立ち会ったその時の立木一郎の懸案は改正に対する第96条だった。
民主主義、自由主義を標榜した憲法その改正に第96条の条文は日本にこの憲法を改正させないための条文だと。その懸案が現実のものとなった。この物語はフィクションですが、戦後の動きがよく分かる。

日本国憲法
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(改正)
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。