書名:錦(にしき)
著者:宮尾 登美子
発行所:中央公論社
発行年月日:2008/9/5
ページ:438頁
定価:1800円+税
宮尾登美子が30年寝かせていた作品。またはじめて男性を主人公にした作品。龍村美術織物(株)の創業者、龍村平蔵が主人公。明治27年大阪で着物屋を創業して、西陣の職人を使って帯の製作・販売をはじめる。その内自分で考えた意匠を商品にしていく。龍村の帯は帯一本に家一軒と言われる位高級な帯。そんな龍村平蔵の生涯を描いている。
絹を材料にして「錦」を作っていく。また国宝級のお茶入れを収納するための絹袋を復元するする作業、正倉院の琴を収納する袋などの復元。1000年の歴史を経て伝えられてきた絹織物を材料、色、染料、蚕に与える桑の葉など分析してそれと同じものを作るために必死に挑戦していく。そんな男の生き様を描いている。この物語では龍村平蔵は菱村吉蔵として描いている。明治、大正、昭和を織物の街を生きた男がいた。面白く読ませて貰った。
織物、和装小物、茶道具の龍村美術織物(京都)
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