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虎の城

書名:虎の城(上)
著者:火坂 雅志
発行所:祥伝社
発行年月日:2004/9/10
ページ:405頁
定価:1905円+税

書名:虎の城(下)
著者:火坂 雅志
発行所:祥伝社
発行年月日:2004/9/10
ページ:395頁
定価:1905円+税

陣借り土豪の息子として近江に生まれた藤堂高虎、何度も主を変えて徳川家康にも仕え、秀忠にも絶大な信頼を得た。豊臣家から徳川家へ鞍替えした鮮やかすぎる転身ぶりから「風見鶏」あるいは「裏切り者」と評されて、誤解の多い人物です。この藤堂高虎の人生を丹念に辿っている。彼の生きた時代は戦国も終息に向かいつつあり、大将の首を取っただけを誇る武辺者よりも、もっと総合的な能力を発揮する人材が求められていた。豊臣秀吉の弟秀長(大和100万石)に仕え、経済、兵站、築城術、土木の大切なことを学ぶ。時代の変化に柔軟に対応出来るようにたゆまざる努力と自己改革によってスペシャリストにしてゼネラリストの武将へと自己改革していった。当時としては希有な高虎。

 黒田如水、加藤清正と同様に高虎の築城術も見事。手がけた城は和歌山城、大洲城、宇和島城、今治城、膳所城、伏見城、江戸城、駿府城、篠山城、亀山城、津城、伊賀上野城など多数にのぼる。そのいずれもが天下の名城と呼ばれている。伊予の大名から、津、伊賀上野の大名に移るとき、今治城の天守閣を解体し、津へ。本当は津城に使う予定だった資材を丹波亀山城の天守閣に使用した。昭和の御世になって今治城を復元するという話になって丹波亀山城の写真を見本に現在の今治城が建築されたとのこと。何故亀山城の写真を見本にしたか、この本を読んで分かる気がした。
戦国という既存の常識、慣習を破壊する時代から創造の時代、秩序維持の時代。豊臣秀吉は「利」を餌に人々を引っ張ってきた。石田三成は「理」を。藤堂高虎は現場主義、そして「情」と「理」の人。現代にも通じる人心把握術、変わりゆく世の中をどう泳いでいくか非常に参考になると思う。