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真剣 新陰流を創った男 上泉伊勢守信綱

書名:真剣
   新陰流を創った男 上泉伊勢守信綱
著者:海道 龍一朗
発行所:実業之日本社
発行年月日:2003/10/25
ページ:445頁
定価:1900円+税

この本は「剣聖」上泉伊勢守信綱の生涯を描いた作品です。関八州の地上州の小領主の次男として生まれた信綱は松本備前守尚勝、愛洲移香斎ら達人を師に、兵法に天稟をみせる。小領主の兄を助けるために兵法を学ぶが、修行途中に兄の病死で、家督を継ぐことになってしまった。戦国時代の関八州は関東管領上杉氏の衰退により、群雄割拠する時代。北条氏康、上杉謙信、武田信玄らに上州の小領主は翻弄させられる。

一武将として謙信の支援を受けて北条と戦い、お家の存続に奔走するが、武田信玄には敗れ、武田信玄に器量を認められて仕官を求められるが、命を掛けて断る。54歳にして廻国修行の道をこころざし。伊勢の北畠氏、奈良の宝蔵院の槍、柳生の剣と邂逅する。兵法の極みを目指す男達を描いている。男なら是非読んでみたい圧巻の歴史小説。興福寺宝蔵院の覚禅坊胤栄との真槍、信綱の真剣との仕合(死合)は圧巻だ。両者の描写が凄く良い。

新陰流を創設して上泉伊勢守信綱は一人の剣豪として知られるばかりではなく弟子に多くの優秀な人物がいる。疋田陰流の疋田文五郎景兼、神陰流の神後伊豆守宗治、柳生新陰流の柳生石舟斎宗厳、松田方新陰流の松田織部助清栄、タイ捨流の丸目蔵人佐長恵、神影流の奥山休賀斎公重...。などなど。弟子は多いが上泉伊勢守信綱の資料は少ない。こんな人物を描くとき作家は自由に筆を運ぶことが出来るのでしょう。なかなか読み応えのある書です。

本書より
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この世は否応なく人が連なる世界である。人は誰かに連ならなければ生きていけない。離れたところで生きているはずの人人が呼び合い、何かに導かれるように引きつけあう。それは個と個の魂が呼び合い、響き合って共に震える。その連なりである。そして、出会いの後に始まる連環。好むと好まざるとに拘わらず、人は誰かに生かされている。
魂の共鳴、そして連環。それを古来の人々は「輪廻」と呼んだ。魂が転がる輪のように転生を続ける。