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墨染の鎧

書名:墨染の鎧(上)
著者:火坂 雅志
発行所:文藝春秋
発行年月日:2009/8/30
ページ:359頁
定価:1619円+税

書名:墨染の鎧(下)
著者:火坂 雅志
発行所:文藝春秋
発行年月日:2009/8/30
ページ:406頁
定価:1619円+税

 安国寺恵瓊の生涯を描いた作品。出自は安芸武田氏の末裔を称えている安国寺恵瓊、安芸銀山城の落城の時に乳飲み子だった恵瓊が臣下に助けられ、安国寺で幼少時を匿われ、京都「東福寺」の僧として修行。その後毛利氏の交渉・調停係として各地の豪族に顔を広げながら毛利の懐刀として活躍する。毛利元就にその才能を認められて、武力ではなく陰での交渉戦の戦士と重用される。豊臣秀吉の高松城水攻めの時の交渉相手として安国寺恵瓊は有名ですが、それ以前に毛利の重臣にも信頼を得ながら、発言権を強くしてきた安国寺恵瓊。

元就の遺言として「中国以外に進出しない、天下を目指さない」があるが、それを毛利輝元、小早川隆景、吉川元春が頑なに守った。しかし時代は変わってきている。その時代の変わり目を読みながら適切なアドバイスをしてきた安国寺恵瓊。織田信長の天下はないと割り切って、秀吉に取り入る。時代を読む目の確かさ。しかし関ヶ原では読み誤った。別の面では東福寺中興の祖とも言われた安国寺恵瓊。戦国の世が作り出した一人の人物。面白く書かれている。