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新潟樽きぬた

書名:新潟樽きぬた
   明和義人口伝 
著者:火坂 雅志
発行所:小学館
発行年月日:2007/9/2
ページ:202頁
定価:1400円+税

明和五年(1768年)に新潟湊で起きた「新潟湊騒動(新潟明和騒動)」を取り上げた著作です。一般に一揆というものは打ち壊しのみで終わるのであるが、この新潟湊で起きた騒動は一般の町民が長岡藩の支配を排除し、みずからの手で街の自治を整然と行った。これは江戸時代を通じて我が国唯一の例であり、市民による自治政府の芽生えの時期とも言える。それは何故。新潟湊は北国船が寄港する非常に繁盛した湊で、泉州堺湊、酒田湊とともに自由な空間に、その豊かな経済を背景に独自の発展を遂げていた。そんな湊での騒動を描いている。

この騒動の主役は呉服問屋の涌井藤四郎、そして影の主役が古町の芸子「お雪」バックグランドに祭り歌「新潟樽きぬた」の歌が響く。涌井藤四郎の義を貫く姿が良い。こんな人が江戸時代はいたのだ。今は???

本書より
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「今の世にできぬことだと言い捨て置いたならば、やがて天運によき時を得たとして正道が行われることあろうか。いやあるはずがない。たとえそれがどんなに難しくとも、人たる者すべきことをせねばならぬ。それが義の心というもの。世の中が悪くなっていくのを手をこまねいて見過ごしていてよいものかっ」と師(竹内式部)の言葉