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偽装報告

書名:偽装報告
著者:高任 和夫
発行所:光文社
発行年月日:2006/4/25
ページ:388頁
定価:1700円+税

リコール隠しに揺れる五代自動車。企業倫理の崩壊と男たちの闘い。三菱自工事件に材をとり、耐震偽装事件やライブドア事件とも通底する企業のモラルハザードの恐るべき現実を描く経済小説です。

五代自動車に勤める主人公、峯岸、法務担当の彼は3年前にリコール問題、総会屋問題で五代自動車の遮蔽体質にうんざりしていた。しかしそれでも生きていくために、五代という財閥ブランドの誇りを捨てることが出来ずになんとか会社に残っていた。
もう一人の主人公、東邦日報の記者深掘、彼は3年前の五代自動車のリコール隠し、総会屋問題で最後まで踏み込めず、結果的にトカゲのしっぽ切りに荷担してしまった。それを悔やみつつ、日々新たな事件を追いかけている。

そんなとき東北自動車道で五代自動車の車による死亡事故がおきた。その事故に疑問をもった深掘は部下に調査を命じる。ディーラーからあがってくる不具合情報を隠蔽し、リコールを逃れようとする名門・五代自動車と、事故原因を追及する新聞記者の必死の攻防──。この国の企業倫理の崩壊と、組織に生きる男の闘いを描く。生々しさがあって迫力のある作品です。