書名:かくて昭和史は甦る
人種差別の世界を叩き潰した日本
著者:渡部 昇一
発行所:クレスト社
発行年月日:1995/5/15
ページ:370頁
定価:1748円+税
現代の前にはやっぱり過去がある。歴史の延長線上に暮らしている。そんなことをすぐに忘れてしまう。官僚が怠慢、政治がだらしない。経済の活性化、政府の無力などと問題は山積み。大地震、原発事故、それらをマスコミは突如として起こったことように報道する。またそれに乗せられてしまう人々がいる。でもそれは彼らに確固たる歴史観が欠如しているからだ。
明治維新の時のモデルは「建武の中興」。「建武の中興」をターゲットに倒幕に走った。下級武士、郷士でも数百年前の歴史はしっかり理解していた。明治維新がかなってその時の政府の主要メンバーがそろって欧米に視察・勉強のために2年近く留守にした。こんな国というのは歴史上どこにもなかった。彼らのいないうちに残ったメンバーが確りと主要なポストを独占してしまって、帰って来たら粛正されてしまう。
でも明治は違った。そしてその洋行組が一番に励んだことは欧米に追いつけ追い越せ、富国強制、欧米に舐められるな!。これを目標にしたはしりに走った。また自分の子ども子孫を同じ仕事に就けなかった。山県有朋の子どもは?大久保利通の子どもは?子どもに嗣がせなかった。これは卓見だと思う。今の政治家は2世3世ばかり、それでは政治は良くはならないということを明治の先人は知っていたのでは。
渡部昇一氏は戦後歴史教育を受けてきた人からみれば右翼と評価するかもしれないけれど。素直な歴史眼で明治、大正、昭和を見つめている。戦後の歴史教育は東京裁判史観、戦前は真っ暗だった史観からの見方ばかり、世界に謝罪外交しかできない政府を見ている人々にとっては異質に写るかもしれないが。じっくり読んでみれば理解出来る。納得できることが多い。特に現代の常識・法律を基点に過去の事象を見てはいけない。(事後法で裁かない、判断しない)というのが基本では。
清貧なリーダーは国を無茶苦茶にしてしまう。東条英機は清貧な人、賄賂も取らなければ私服を肥やすこともなかった。大政翼賛会で政党補助金は国から支給されていた。これってお金には綺麗かも知れないが、それで政治ができるというのは間違い。井上馨のように三菱財閥と密着していろいろ懐にいれていた。でもその当時は大至急財閥を育成する必要があった。大資本を集めて国力を強くしないと欧米資本に対向できない。財閥は悪いものと言ったのは東京裁判史観から。
ちなみに韓国の朴大統領は一番に財閥を育てた。韓国には財閥がある。その時その時の判断で歴史は綴られてきたということを自分の目でみ、考えるための指針を与えてくれる。これは渡部昇一氏が、編集の若い人に口頭で語ったことをまとめたものだとか。書き物と違うのでわかり易い歴史書です。
今までの歴史観をちょっと横に於いて置いて読んでみると今まで考えもしなかったことが見えてくると思います。